「ちょっとだけ、ここも変えてもらえますか?」
「ついでに、これもお願いできますか?」
「少しだけ追加で、作ってもらえますか?」
こんなクライアントの「ちょっと」。
一つ一つは小さい。 断るほどのことでもない。 だから、つい引き受けてしまう。
だが、この「ちょっと」が積み重なると、クリエイターは詰む。
なぜか。
「ちょっと」は、積み重なると「大量」になるから
この記事では、
- クライアントの「ちょっと」とは何か
- なぜ積み重なると詰むのか
- どう断ればいいのか
を、実務の視点で整理していく。
クライアントの「ちょっと」の正体
まず、クライアントの「ちょっと」とは何か。
パターン1:「ついでに」系
「ついでに、これもお願いできますか?」
例:
- ロゴ制作の依頼
- 「ついでに名刺のデザインも」
- 「ついでにSNSヘッダーも」
- 「ついでに封筒のデザインも」
この「ついでに」が、3つ、4つと増えていく。
パターン2:「少しだけ」系
「少しだけ、ここを変えてもらえますか?」
例:
- 「少しだけ、色を変えてください」
- 「少しだけ、レイアウトを調整してください」
- 「少しだけ、文字を大きくしてください」
- 「少しだけ、要素を追加してください」
この「少しだけ」が、10回、20回と繰り返される。
パターン3:「急ぎで」系
「急ぎで、これだけお願いできますか?」
例:
- 「急ぎでバナーを1つ」
- 「急ぎで画像を1枚」
- 「急ぎでテキストを修正」
この「急ぎで」が、週に2回、3回と発生する。
パターン4:「簡単だと思うので」系
「簡単だと思うので、お願いできますか?」
例:
- 「簡単だと思うので、この画像も加工してください」
- 「簡単だと思うので、別バージョンも作ってください」
- 「簡単だと思うので、サイズ違いも作ってください」
クライアントにとっては「簡単」に見える。 だが、実際には時間がかかるのである。
なぜ「ちょっと」を引き受けてしまうのか
「ちょっと」と言われると、断りづらい。
なぜか。
理由1:小さいから断れない
一つ一つは、確かに小さい。
- 5分で終わる
- 10分で終わる
- これくらいなら
そう思って、引き受けてしまう。
だが、この「これくらいなら」が積み重なると、膨大になるのである。
理由2:「ケチだと思われたくない」
「こんな小さいことで断ったら、ケチだと思われるのでは」
そう思って、引き受けてしまう。
特に、
- 継続案件の場合
- 良い関係を築きたい場合
- リピートしてほしい場合
こういう時は、断りづらいわけだ。
理由3:「次につながるかも」
「ここで引き受けておけば、次の仕事につながるかも」
そう期待して、引き受けてしまう。
だが、実際は、
無料で対応する人
として認識されるだけなのである。
理由4:境界線が曖昧
そもそも、どこまでが対応範囲なのか。 どこからが追加料金なのか。
この境界線が曖昧だから、断れないのである。
「ちょっと」が積み重なると何が起きるか
「ちょっと」は、一つ一つは小さい。
だが、積み重なると、大きな問題になる。
起きること1:時間が奪われる
「ちょっと」を10回引き受けると、どうなるか。
例:
- 1回の「ちょっと」:10分
- 10回の「ちょっと」:100分(約1.7時間)
この1.7時間があれば、
- 他の案件を進められる
- 新規案件の対応ができる
- 休むことができる
だが、「ちょっと」に消えていくのである。
起きること2:本来の仕事が進まない
「ちょっと」に時間を取られると、本来の仕事が進まない。
- 新規案件の制作が遅れる
- 提案資料が作れない
- スキルアップの時間がない
結果として、
- 納期に間に合わなくなる
- クオリティが下がる
- 信用を失う
という流れになる。
起きること3:時給が下がる
「ちょっと」は、無料で対応することが多い。
つまり、
報酬が増えないのに、時間だけ増える
ということだ。
例:
- 報酬:5万円
- 当初の想定時間:20時間
- 想定時給:2,500円
「ちょっと」が10回発生した結果:
- 実際の時間:25時間
- 実際の時給:2,000円
時給が500円下がるのである。
起きること4:スコープクリープが起きる
スコープクリープとは、範囲が少しずつ広がることである。
最初: 「ロゴデザイン1案」
途中から:
- 「ちょっと別パターンも見たい」(+1案)
- 「ついでに名刺も」(+名刺デザイン)
- 「少しだけSNSヘッダーも」(+ヘッダー)
気づけば、
ロゴデザイン1案 → ロゴ2案 + 名刺 + ヘッダー
に膨れ上がっているのである。
起きること5:クライアントが慣れてくる
「ちょっと」を引き受け続けると、クライアントが慣れてくる。
- 「この人は、ちょっとしたことなら無料でやってくれる」
- 「気軽に頼める人」
- 「都合の良い人」
こう認識されるわけだ。
すると、
- 「ちょっと」の頻度が増える
- 「ちょっと」の範囲が広がる
- 断りづらくなる
という悪循環に入るのである。
「ちょっと」を断れないと、どう詰むか
「ちょっと」を断れないまま続けると、こうなる。
詰み方1:スケジュールが埋まる
「ちょっと」の対応で、スケジュールが埋まる。
- 新規案件を受けられない
- 余白がなくなる
- 常に追われている
この状態では、
- 収入が増えない
- 成長しない
- 疲れるだけ
というわけだ。
詰み方2:報酬が増えないのに忙しい
「ちょっと」は、無料で対応することが多い。
だから、
- 忙しいのに報酬が増えない
- 時間がないのに稼げない
- 消耗だけが残る
この状態が続くと、
「なぜこんなに頑張っているのに、楽にならないんだろう」
と思い始めるのである。
詰み方3:断れなくなる
「ちょっと」を引き受け続けると、断れなくなる。
なぜなら、
- 今まで引き受けてきた
- 「なぜ今回は断るのか」と思われる
- 一貫性がない
と思われるからだ。
こうして、
無限に「ちょっと」を引き受ける人
になってしまうのである。
詰み方4:本来やるべきことができない
「ちょっと」に時間を取られると、本来やるべきことができない。
- スキルアップの時間
- 新規開拓の時間
- 発信の時間
これらが全てできなくなる。
結果として、
- 成長しない
- 仕事の質が上がらない
- 単価も上がらない
という状態になるわけだ。
「ちょっと」を断る方法
では、どうすれば「ちょっと」を断れるのか。
方法1:範囲を最初に決める
「ちょっと」を断る一番の方法は、範囲を最初に決めることだ。
見積の例:
【ロゴ制作】
・ロゴデザイン:3案
・修正:3回まで
・納品形式:AI、PNG、JPG
上記以外の対応(名刺、バナー、別バージョンなど)は、
別途お見積りとなります。
この一文があるだけで、
- 「ちょっと」が発生しにくい
- 発生しても断りやすい
- 追加料金を請求しやすい
というわけだ。
方法2:「別途お見積り」と伝える
「ちょっと」を依頼されたら、こう伝える。
ご連絡ありがとうございます。
ご依頼の内容は、当初の範囲外となりますので、
別途お見積りとなります。
【追加作業のお見積り】
・名刺デザイン:2万円
・納期:1週間
ご検討いただけますと幸いです。
この返信なら、
- 断っているわけではない
- 対応は可能
- だが有料
ということが伝わる。
方法3:「今は対応できない」と伝える
時間的に対応できない場合は、こう伝える。
ご連絡ありがとうございます。
現在、他の案件で手一杯のため、
すぐの対応は難しい状況です。
◯月◯日以降であれば対応可能ですが、
お急ぎの場合は他の制作者様をご検討ください。
この返信なら、
- 断っている
- だが理由がある
- 悪い印象を与えない
というわけだ。
方法4:無料対応の基準を決める
全ての「ちょっと」を断る必要はない。
無料で対応する基準を決める
のである。
例:
- 5分以内で終わる:無料
- 10分以上かかる:有料
- 範囲外の作業:有料
この基準があれば、
- 判断に迷わない
- 一貫性がある
- クライアントも納得する
というわけだ。
「ちょっと」を断ったらどうなるか
「ちょっと」を断ったら、仕事がなくなるのでは?
そう心配する人もいるだろう。
実際に起きること
パターン1:追加料金を払ってくれる
意外と、追加料金を払ってくれることは多い。
なぜなら、
- クライアントも理解している
- 本当に必要なら払う
- 正当な対価だとわかっている
からだ。
パターン2:依頼を取り下げる
追加料金を払わず、依頼を取り下げることもある。
だが、これは問題ない。
なぜなら、
- 本当に必要ではなかった
- 無料だから頼もうとしただけ
- 対応しなくて正解
だからである。
パターン3:関係が良くなる
境界線を引くことで、関係が良くなることもある。
なぜなら、
- プロとして扱われる
- 「何でも無料で頼める人」ではなくなる
- 対等な関係になる
からだ。
仕事は減らない
「ちょっと」を断っても、仕事は減らない。
むしろ、
- 質の良いクライアントが残る
- 条件の悪いクライアントが去る
- 仕事の質が上がる
という結果になるのである。
「ちょっと」が発生しにくい設計
そもそも、「ちょっと」が発生しにくい設計を作る。
設計1:パッケージ化する
単品ではなく、パッケージ化する。
例:
【ブランディングパッケージ】
・ロゴデザイン
・名刺デザイン
・SNSヘッダー
・封筒デザイン
一式:10万円
最初から全部含めておけば、
- 「ついでに」が発生しない
- 追加依頼がない
- スムーズに進む
というわけだ。
設計2:追加料金表を作る
追加料金表を作っておく。
例:
【追加料金】
・別案追加:1案あたり1万円
・名刺デザイン:2万円
・バナー制作:1点5,000円
・修正4回目以降:1回5,000円
この料金表があれば、
- 「ちょっと」が来ても対応しやすい
- 追加料金を請求しやすい
- トラブルにならない
という状態になる。
設計3:定期契約にする
継続的に「ちょっと」が発生する場合、定期契約にする。
例:
【月額サポート契約】
月額3万円で、以下の対応を含む:
・軽微な修正:月5回まで
・バナー制作:月2点まで
・画像加工:月3点まで
この契約なら、
- 「ちょっと」が契約内に含まれる
- 毎回見積を出す必要がない
- 安定した収入になる
というわけだ。
「ちょっと」に対する心構え
最後に、「ちょっと」に対する心構えを整理する。
心構え1:「ちょっと」は積み重なる
「ちょっと」は、一つ一つは小さい。
だが、積み重なると大きくなる。
この認識を持つことが、第一歩である。
心構え2:無料=安い人ではない
無料で対応することは、親切ではない。
むしろ、
自分の価値を下げる行為
である。
対価をもらうことは、当然なのである。
心構え3:断ることは悪いことではない
断ることは、悪いことではない。
むしろ、
- プロとして当然
- 境界線を引くこと
- 長く続けるための前提
なのである。
心構え4:クライアントのためでもある
境界線を引くことは、クライアントのためでもある。
なぜなら、
- 何が有料で何が無料か明確
- 判断しやすい
- トラブルにならない
からだ。
曖昧な関係より、明確な関係の方が長く続くのである。
おわりに
クライアントの「ちょっと」は、一つ一つは小さい。
だが、積み重なると、クリエイターは詰む。
構造:
- 「ちょっと」を引き受ける
- 時間が奪われる
- 報酬は増えない
- 「ちょっと」がさらに増える
- スケジュールが埋まる
- 詰む
この構造から抜け出すには、
境界線を引くこと
である。
- 範囲を最初に決める
- 「別途お見積り」と伝える
- 無料対応の基準を決める
この設計をしておくだけで、
- 「ちょっと」が発生しにくい
- 発生しても断りやすい
- 消耗しない
という状態になる。
「ちょっとだけ」という言葉は、優しく聞こえる。
だが、その優しさの裏には、膨大な時間と労力が隠れている。
「ちょっと」を断ることは、自分を守ることであり、長く続けるための前提なのである。
ブログでは構造を、
noteでは判断基準をまとめています。
実務でそのまま使うための整理なので、必要な人だけ、参考にしてください。
▶︎ noteはこちら
—— 銭ナッツ


