「そろそろ法人化した方がいいのか」
「個人事業主のままでいいのか」
「法人化って、実際どうなのか」
売上が安定してくると、必ず考えることだ。
法人化。
周りを見ると、法人化している人もいる。 だが、個人事業主のままの人もいる。
どちらが正解なのか。
答えを先に書くと、
正解はない。自分の状況や好みによって判断するしかない
この記事では、
- 法人化すべきタイミング
- 法人化のメリット・デメリット
- 法人化後の実務で変わること
- 判断の基準
を、実務の視点で整理していく。
法人化とは何か
まず、法人化とは何か。
個人事業主と法人の違い
個人事業主:
- 個人として事業をする
- 開業届を出すだけ
- 確定申告は自分でできる
法人(会社):
- 法人として事業をする
- 登記が必要
- 決算・税務申告が複雑(つまり税理士が必要)
この違いである。
法人化の種類
法人化といっても、種類がある。
株式会社:
- 一般的な法人形態
- 設立費用:約25万円
- 信用度が高い
合同会社:
- 設立費用が安い(約10万円)
- 株式会社より簡易
- 最近増えている
多くのクリエイターは、
- 最初は合同会社
- 規模が大きくなったら株式会社
という流れを取るのである。
法人化すべきタイミング
では、いつ法人化すべきか。
タイミング1:売上1000万円を超えたとき
一つの目安は、売上1000万円である。
なぜか。
理由1:消費税の免税が2年間受けられる
個人事業主で売上1000万円を超えると、2年後から消費税を納める義務がある。
だが、法人化すると、
- 最初の2年間は消費税が免税
- この2年間で約200万円の節税効果
というメリットがあるのである。
理由2:所得税と法人税の税率の差
個人事業主の場合、
- 所得税:累進課税(最高45%)
- 住民税:10%
- 合計:最高55%
法人の場合、
- 法人税:約23%(中小企業)
- 実効税率:約30%前後
売上1000万円を超えると、法人の方が税率が低くなる可能性があるわけだ。
タイミング2:利益が500万円を超えたとき
売上ではなく、利益で見ると、
利益500万円
が一つの目安になる。
このラインを超えると、
- 法人化した方が節税できる
- 手間とコストをかけても、メリットがある
という状態になる。
タイミング3:取引先から法人化を求められたとき
企業との取引で、
「法人でないと取引できない」
と言われることがある。
特に、
- 大手企業
- 官公庁
- 一定規模以上のプロジェクト
こういう場合、法人化が必須になるのである。
なので自身のビジネスモデルに手応えを感じたのなら、初手から法人設立する手もある。
タイミング4:事業を大きくしたいとき
個人事業主のままでは、
- 融資が受けにくい
- 人を雇いにくい
- 信用が低い
だが、法人化すると、
- 融資が受けやすくなる
- 採用がしやすくなる
- 信用が上がる
事業を拡大したいなら、法人化は必須やな。
法人化のメリット
法人化すると、何が良いのか。
メリット1:節税効果
法人化の最大のメリットは、節税である。
節税の方法:
1. 役員報酬を設定できる
- 自分への給料を経費にできる
- 給与所得控除が使える
- 所得を分散できる
2. 家族を役員にできる
- 配偶者や親を役員にする
- 所得を分散できる
- 全体の税額が下がる
3. 退職金を積み立てられる
- 退職金は経費になる
- 将来の自分への支払い
- 大きな節税効果
4. 経費の範囲が広い
- 社宅として家賃を経費に
- 生命保険を経費に
- 出張手当を経費に
これらの節税が、個人事業主ではできないのである。
メリット2:信用が上がる
法人化すると、信用が上がる。
信用の効果:
- 大手企業との取引がしやすい
- 融資が受けやすい
- 採用がしやすい
- 「ちゃんとした会社」に見える
個人事業主より、法人の方が信用されるのは事実やな。
メリット3:赤字の繰越が長い
赤字が出た場合、
個人事業主:
- 3年間繰り越せる
法人:
- 10年間繰り越せる
この違いは大きい。
メリット4:事業の継続性
個人事業主は、
- 自分が倒れたら終わり
- 自分がいないと回らない
だが、法人は、
- 法人として存続する
- 代表が変わっても続く
- 事業として継続できる
この安定性が生まれるのである。
メリット5:資金調達がしやすい
法人化すると、
- 銀行からの融資が受けやすい
- VC(ベンチャーキャピタル)からの出資も可能
- 補助金・助成金も受けやすい
個人事業主より、選択肢が広がるわけだ。
法人化のデメリット
だが、法人化は良いことばかりではない。
デメリット1:設立費用がかかる
法人を作るには、お金がかかる。
設立費用:
- 株式会社:約25万円
- 合同会社:約10万円
この初期費用が必要なのである。
ただ、設立費用も[創立費]という繰延資産という損金扱いも可能。
デメリット2:維持費用がかかる
法人を維持するには、毎年コストがかかる。
年間の維持費:
- 法人住民税:約7万円(赤字でも必要)
- 税理士費用:年間30〜50万円
- 登記費用:変更があれば数万円
- 社会保険:強制加入(代表1人でも)
合計すると、
年間50〜70万円
の維持費がかかるのである。
デメリット3:税務申告が複雑
個人事業主の確定申告は、自分でできる。
だが、法人の決算・税務申告は、
- 複雑すぎて自分ではできない
- 税理士に頼む必要がある
- 間違えると追徴課税
このリスクがあるわけだ。
デメリット4:事務作業が増える
法人化すると、事務作業が増える。
増える作業:
- 決算処理
- 法人税申告
- 給与計算
- 社会保険手続き
- 登記変更
- 株主総会の議事録作成
この手間が、想像以上に大きいのである。
デメリット5:廃業が面倒
個人事業主なら、
- 廃業届を出すだけ
- 費用はかからない
だが、法人は、
- 解散登記が必要
- 清算手続きが必要
- 費用が10万円以上
やめるのも、面倒なのである。
デメリット6:赤字でも税金がかかる
個人事業主は、赤字なら税金はゼロ。
だが、法人は、
赤字でも法人住民税7万円
を払う必要があるのである。
法人化後の実務で変わること
法人化すると、実務で何が変わるのか。
変わること1:銀行口座を分ける
法人化したら、
- 法人口座を作る
- 個人口座と完全に分ける
- すべての取引を法人口座で
この徹底が必要になる。
変わること2:役員報酬を決める
法人化すると、自分への給料を「役員報酬」として決める。
ルール:
- 毎月定額である必要がある
- 期中で変更できない(原則)
- 事業年度の開始から3ヶ月以内に決定
この役員報酬の設定が、節税の鍵になるのである。
変わること3:社会保険に加入する
法人化すると、
社会保険への加入が強制
になる。
加入する保険:
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険(従業員がいる場合)
- 労災保険(従業員がいる場合)
この社会保険料が、意外と高い。
例:
- 役員報酬:月30万円
- 社会保険料(会社負担分):約4.5万円
- 年間:約54万円
この負担が増えるのである。
変わること4:決算月を決める
個人事業主の決算月は、12月で固定。
だが、法人は、
自由に決算月を決められる
決め方のポイント:
- 繁忙期を避ける
- 税理士の繁忙期(3月)を避ける
- キャッシュフローを考える
この戦略的な決算月の設定ができるのである。
変わること5:税理士との付き合い
個人事業主なら、税理士なしでもいける。
だが、法人化したら、
税理士は必須
と考えた方がいい。
税理士費用の相場:
- 顧問料:月2〜3万円
- 決算料:15〜20万円
- 年間:40〜50万円
この費用が、毎年かかるのである。
変わること6:請求書・領収書の管理
法人化すると、書類の管理が厳密になる。
必要なこと:
- すべての領収書を保管(7年間)
- 請求書の発行・管理
- 帳簿の記録
- 議事録の作成
この事務作業が増えるわけだ。
法人化しない方がいい人
法人化は、全員に最適なわけではない。
しない方がいい人1:売上が少ない人
売上500万円以下の場合、
- 法人化のメリットが少ない
- 維持費の方が高い
- 個人事業主のままでいい
というわけだ。
しない方がいい人2:一人で続けたい人
- 規模を拡大する気がない
- 一人で自由にやりたい
- 事務作業が嫌い
こういう人は、個人事業主のままでいい。
しない方がいい人3:赤字の可能性がある人
法人は、赤字でも税金がかかる。
売上が不安定なら、
- 個人事業主のまま
- 安定してから法人化
この方が安全やな。
法人化の判断基準
では、法人化すべきかどうか、どう判断するか。
判断基準1:数字で見る
法人化を検討すべきライン:
- 売上:1000万円以上
- 利益:500万円以上
- この状態が2年以上続いている
この条件を満たすなら、法人化を検討する価値がある。
判断基準2:将来のビジョン
法人化した方がいい人:
- 事業を拡大したい
- 人を雇いたい
- 融資を受けたい
- 大手企業と取引したい
個人事業主のままでいい人:
- 一人で続けたい
- 自由に働きたい
- 規模を拡大する気がない
自分のビジョン次第である。
判断基準3:事務作業の負担
法人化すると、事務作業が増える。
この負担を受け入れられるか。
確認すること:
- 税理士費用を払えるか
- 帳簿管理ができるか
- 書類作成の時間があるか
この現実を受け入れられるなら、法人化してもいい。
判断基準4:節税効果
実際に、どれくらい節税できるか計算する。
計算例:
【個人事業主の場合】
売上:1200万円
経費:400万円
所得:800万円
税金:約240万円(所得税・住民税)
【法人の場合】
売上:1200万円
経費:400万円
役員報酬:600万円(経費)
法人利益:200万円
法人税:約60万円
個人の税金(給与所得):約90万円
合計税金:約150万円
差額:約90万円の節税
この計算で、節税効果が年間50万円以上なら、法人化する価値があるのである。
法人化のタイミングで失敗しないために
法人化で失敗しないために、これだけは知っておいてほしい。
失敗1:早すぎる法人化
売上が安定していないのに法人化すると、
- 維持費が重い
- 赤字でも税金がかかる
- 事務作業に追われる
という状態になる。
対策: 最低でも、利益500万円が2年続いてから法人化する。
失敗2:税理士を選び間違える
税理士選びは重要だ。
良い税理士の条件:
- クリエイター・フリーランスの実績がある
- レスポンスが早い
- 節税の提案をしてくれる
- 説明がわかりやすい
この条件を満たす税理士を探すべきである。
失敗3:社会保険料を甘く見る
社会保険料は、想像以上に高い。
例:
- 役員報酬:月40万円
- 社会保険料(会社負担):月6万円
- 年間:72万円
この負担を計算に入れておかないと、後で苦しむのである。
失敗4:決算月を適当に決める
決算月は、戦略的に決めるべきだ。
避けるべき月:
- 繁忙期(決算処理の時間がない)
- 3月(税理士の繁忙期)
おすすめの月:
- 閑散期
- キャッシュフローが安定している月
この判断を間違えると、後で変更するのが面倒なのである。
おわりに
法人化するタイミングは、人それぞれだ。
一つの目安は、
売上1000万円、利益500万円
このラインを超えたら、検討する価値がある。
法人化のメリットは、
- 節税効果
- 信用が上がる
- 経費の範囲が広い
- 事業の継続性
だが、デメリットもある。
- 設立費用・維持費用
- 税務申告が複雑
- 事務作業が増える
- 廃業が面倒
この現実を受け入れられるか。
法人化は、
- 数字で判断する
- 将来のビジョンで判断する
- 事務作業の負担を考える
- 節税効果を計算する
この4つの基準で、冷静に判断すべきである。
法人化は、ゴールではない。
事業を拡大するための手段
に過ぎないのである。
法人化しなくても、一人で十分稼げる。 法人化しても、それで全てが解決するわけではない。
大事なのは、自分にとって何が最適かを、冷静に判断することである。
そして、もし法人化すると決めたなら、
- 良い税理士を見つける
- 事務作業の仕組みを作る
- 社会保険料の負担を計算する
- 長期的な視点を持つ
この準備をして、臨んでほしい。
法人化は、新しいステージへの入り口なのである。
ブログでは構造を、
noteでは判断基準をまとめています。
実務でそのまま使うための整理なので、必要な人だけ、参考にしてください。
▶︎ noteはこちら
—— 銭ナッツ


