「これ以上、一人では回らない」
「人を雇えば、もっと仕事ができるのでは」
「でも、人を雇うのは不安」
独立して3年、4年と経つと、必ずこの分岐点に立つ。
一人でやり続けるか。 人を雇うか。
この判断は、簡単ではない。
人を雇えば、楽になる部分もある。 だが、大変になる部分も確実にある。
この記事では、
- 人を雇うべきタイミング
- 雇うことで楽になること、大変になること
- 雇う前に知っておくべきこと
- それでもチームで働く意味
を、実務の視点で整理していく。
人を雇うべきタイミング
まず、人を雇うべきタイミングはいつか。
タイミング1:時間の限界が来たとき
一人でできる仕事量には、限界がある。
- 月の稼働日:20日
- 1日の作業時間:8時間
- 月の作業時間:160時間
これ以上は、物理的に増やせない。
この限界が来たとき、
- 仕事を断る
- 単価を上げる
- 人を雇う
この3つの選択肢しかないのである。
タイミング2:同じ作業の繰り返しが増えたとき
自分がやらなくてもいい作業が増えてきたとき。
例:
- 画像の書き出し
- ファイルの整理
- 修正対応
- 簡単なデザイン作業
こういう作業を、自分がやり続けるのは非効率だ。
誰かに任せられるなら、任せた方がいい。
タイミング3:収入に余裕ができたとき
人を雇うには、人件費がかかる。
最低ライン:
- アルバイト:時給1,500円×週20時間=月12万円
- 正社員:月給25万円〜
この人件費を払っても、経営が成り立つ状態。
これが、人を雇うための最低条件である。
タイミング4:一人でやることに限界を感じたとき
技術的な限界ではなく、精神的な限界。
- 一人で全部やるのが辛い
- 誰かと一緒に働きたい
- チームで仕事をしたい
この感覚が出てきたら、人を雇うタイミングかもしれない。
人を雇うことで楽になること
人を雇うと、何が楽になるのか。
楽になること1:時間が生まれる
人を雇うことで、自分の時間が生まれる。
例:
- 自分の作業時間:月160時間
- スタッフの作業時間:月80時間
- 合計:月240時間
これまでできなかった仕事ができるようになる。
楽になること2:単純作業から解放される
単純作業を任せられる。
- 画像の書き出し
- ファイルの整理
- 簡単な修正対応
これらをスタッフに任せることで、
- 自分は企画や提案に集中できる
- クリエイティブな部分に時間を使える
という状態になる。
楽になること3:精神的に楽になる
一人ではなく、チームになる。
- 相談できる相手がいる
- 一緒に考えてくれる人がいる
- 孤独ではない
この精神的な支えは、想像以上に大きいのである。
楽になること4:売上の上限が上がる
一人でできる仕事量には限界がある。
だが、人を雇えば、
- より多くの案件を受けられる
- より大きな案件に対応できる
- 売上の上限が上がる
この可能性が広がるわけだ。
人を雇うことで大変になること
だが、人を雇うことは楽なことばかりではない。
大変なこと1:育成が必要
人を雇ったら、すぐに戦力になるわけではない。
育成にかかる時間:
- 最初の1ヶ月:ほぼ教育
- 2〜3ヶ月:半分は教育、半分は実務
- 4〜6ヶ月:ようやく一人で作業できる
この期間、自分の時間は教育に取られる。
つまり、
雇った直後は、むしろ忙しくなる
のである。
大変なこと2:正しい育成が必要
ただ教えればいいわけではない。
必要なこと:
- 作業手順のマニュアル化
- フィードバックの仕方
- モチベーションの管理
- 成長を見守る忍耐力
これができないと、
- スタッフが育たない
- すぐに辞めてしまう
- また最初から教育
という悪循環に入るのである。
大変なこと3:人件費がかかる
人を雇うと、固定費が発生する。
例:
- アルバイト:月12万円
- 社会保険・税金:月3万円
- 合計:月15万円
この15万円は、
- 仕事があってもなくても払う
- 毎月確実に出ていく
- 売上が下がっても払う
固定費なのである。
大変なこと4:働きやすい環境づくり
人を雇ったら、働きやすい環境を作る必要がある。
必要なこと:
- 明確な指示
- 適切なフィードバック
- 成長の機会
- 公平な評価
- 相談しやすい雰囲気
これができないと、
- スタッフが不満を持つ
- モチベーションが下がる
- すぐに辞めてしまう
というわけだ。
大変なこと5:コミュニケーションコスト
一人なら、考えて、すぐ実行できる。
だが、人を雇うと、
- 説明する時間
- 確認する時間
- 調整する時間
このコミュニケーションコストが発生する。
場合によっては、
自分でやった方が早い
と思うこともあるのである。
スタッフの生産性について
ここで、重要なことを伝えておく。
スタッフは、代表の何分の1かの生産性しかない
現実的な数字
代表の作業時間を100とすると、
- 入社1ヶ月目のスタッフ:10〜20
- 入社3ヶ月目のスタッフ:30〜40
- 入社6ヶ月目のスタッフ:50〜60
- 入社1年目のスタッフ:60〜70
こういう数字になる。
つまり、
代表と同じ速さで仕事ができるようになるには、最低1年かかる
のである。
この現実を受け入れる
「なぜこんなに遅いのか」 「自分でやった方が早い」
そう思ってしまうことがある。
だが、これは当然なのである。
なぜなら、
- 代表は何年も経験がある
- 代表は自ら立ち上げた事だから熱い気持ちがある
- スタッフは始めたばかり
- 経験の差は、すぐには埋まらない
からだ。
この現実を受け入れないと、
- イライラする
- スタッフを責める
- 関係が悪くなる
という結果になってしまうのである。
長期的な視点で見る
だが、長期的に見れば、必ず育つ。
1年後: 60〜70%の生産性 2年後: 80〜90%の生産性 3年後: 代表と同じか、それ以上
この長期的な視点を持つことが、育成には必要なのである。
雇うのは大変だが、やめさせるのはもっと難しい
人を雇う前に、これだけは知っておいてほしい。
雇うのは簡単だが、やめさせるのは難しい
簡単には解雇できない
日本の労働法では、従業員を簡単には解雇できない。
解雇できる条件:
- 能力不足(だが証明が必要)
- 業績悪化(だが整理解雇の4要件)
- 重大な違反行為
これらの条件を満たさないと、解雇は違法になる可能性がある。
ミスマッチが起きたら
もし、
- スキルが合わない
- 価値観が合わない
- 成長が見込めない
という状態になったら、どうするか。
選択肢:
- 育成を続ける(時間とコストがかかる)
- 配置を変える(小規模事業では難しい)
- 退職を促す(慎重な対応が必要)
どれも、簡単ではないのである。
だから慎重に雇う
だからこそ、人を雇う時は慎重になるべきだ。
見るべきポイント:
- スキルは十分か
- 価値観は合うか
- 成長意欲はあるか
- コミュニケーションは取れるか
- 長く働く意思はあるか
この判断を間違えると、
- 双方が不幸になる
- 時間とコストが無駄になる
- 精神的に消耗する
という結果になるのである。
それでもチームで働く力は大きい
ここまで、大変なことを書いてきた。
だが、それでも伝えたい。
チームで働く力は、想像以上に大きい
力1:一人ではできないことができる
一人では受けられなかった案件が、受けられるようになる。
- 大規模なプロジェクト
- 短納期の案件
- 複数の案件を同時進行
この可能性が広がるのである。
力2:アイデアが広がる
一人で考えるより、二人で考える方が、アイデアは広がる。
- 「こういう方法もあるんじゃないですか」
- 「こっちの方が良いと思います」
こういう意見が、作品のクオリティを上げるのである。
力3:精神的な支えになる
一人で事業をやっていると、孤独を感じることがある。
だが、チームがあれば、
- 相談できる
- 一緒に喜べる
- 一緒に乗り越えられる
この支えは、金額では測れない価値があるのである。
力4:自分の時間が生まれる
スタッフに任せられることが増えると、自分の時間が生まれる。
この時間を使って、
- 新しいスキルを学ぶ
- 新規開拓をする
- 事業の戦略を考える
こういうことができるようになる。
つまり、
経営者としての仕事に集中できる
わけだ。
力5:事業として継続できる
一人だと、
- 自分が倒れたら終わり
- 自分がいないと回らない
- 自分の限界が事業の限界
だが、チームがあれば、
- 誰かが支えてくれる
- 自分がいなくても回る
- 事業として継続できる
この安定性が生まれるのである。
人を雇う前にやるべきこと
人を雇う前に、これだけはやっておくべきだ。
やるべきこと1:業務のマニュアル化
スタッフに任せる業務を、マニュアル化する。
マニュアルに書くこと:
- 作業の手順
- 使うツール
- 注意点
- 完成イメージ
このマニュアルがないと、
- 毎回口頭で説明
- 毎回同じ質問が来る
- 教育に時間がかかる
というわけだ。
やるべきこと2:収支の計算
人を雇っても、経営が成り立つか計算する。
計算例:
【現状】
売上:月50万円
経費:月10万円
利益:月40万円
【人を雇った場合】
売上:月70万円(増加)
経費:月10万円
人件費:月15万円(新規)
利益:月45万円
この計算で、利益が増えるなら雇っていい。
だが、利益が減るなら、まだ早いのである。
やるべきこと3:教育する時間の確保
スタッフを雇ったら、最初の3ヶ月は教育に時間を取られる。
この時間を確保できるか。
確認すること:
- 今のスケジュールに余白はあるか
- 教育する時間は作れるか
- 売上が一時的に下がっても大丈夫か
この準備ができていないと、
- スタッフが育たない
- 自分が疲弊する
- 失敗する
という結果になるのである。
やるべきこと4:働く環境の整備
スタッフが働ける環境を整える。
必要なもの:
- 作業スペース
- パソコン・ツール
- 連絡手段(Slack、Chatworkなど)
- 業務管理システム
これがないと、スタッフは働けない。
人を雇わない選択肢もある
最後に、これも伝えておきたい。
人を雇わない選択肢もある
選択肢1:外注を使う
正社員やアルバイトではなく、外注を使う。
メリット:
- 必要な時だけ頼める
- 固定費がかからない
- 育成の手間がない
デメリット:
- コストが高い
- 品質が安定しない
- チームにはならない
この選択肢も、十分ありやな。
選択肢2:一人で続ける
一人で続けるという選択肢もある。
- 単価を上げる
- 仕事を絞る
- 効率化する
この方法で、一人でも十分稼げる。
一人のメリット:
- 自由
- 固定費が少ない
- 意思決定が早い
このメリットを捨てる必要はないのである。
選択肢3:パートナーを見つける
雇用ではなく、パートナーシップという形もある。
- 対等な関係
- 一緒に事業を作る
- リスクも報酬も分け合う
この形なら、
- 雇用のリスクがない
- お互いに成長できる
- 強い関係が築ける
という可能性があるわけだ。
おわりに
一人でやるか、人を雇うか。
この分岐点に立ったとき、簡単に決められる答えはない。
人を雇えば、
- 時間が生まれる
- 単純作業から解放される
- 精神的に楽になる
- 売上の上限が上がる
だが、同時に、
- 育成が必要
- 人件費がかかる
- 働きやすい環境づくりが必要
- スタッフは代表の何分の1かの生産性しかない
- 雇うのは簡単だが、やめさせるのは難しい
この現実も受け入れる必要がある。
それでも、チームで働く力は大きい。
- 一人ではできないことができる
- アイデアが広がる
- 精神的な支えになる
- 事業として継続できる
この可能性は、一人では得られないものである。
人を雇うかどうかは、
- 今の状況
- 将来のビジョン
- 自分の性格
これらを総合的に判断して決めるべきだ。
そして、もし人を雇うと決めたなら、
- 慎重に採用する
- 正しく育成する
- 働きやすい環境を作る
- 長期的な視点を持つ
この覚悟を持って、臨んでほしい。
一人でやるのも、チームでやるのも、どちらも正解である。
大事なのは、自分にとって何が最適かを、冷静に判断することなのである。
ブログでは構造を、
noteでは判断基準をまとめています。
実務でそのまま使うための整理なので、必要な人だけ、参考にしてください。
▶︎ noteはこちら
—— 銭ナッツ


