「修正、何回でも対応します」
「納得いくまで調整します」
「お気軽に修正依頼してください」
こういう言葉を、見積や営業で使っていないだろうか。
一見、親切で柔軟な対応に見える。 クライアントも喜ぶだろう。
だが、実務を見ていると、修正回数を決めないクリエイターほど、消耗している。
なぜか。
修正が終わらない無限ループに入るから
この記事では、
- 修正回数を決めないと何が起きるか
- なぜ消耗するのか
- どう決めれば消耗しないか
を、実務の視点で整理していく。
修正回数を決めないと起きること
まず、修正回数を決めないとどうなるか。
パターン1:修正が10回を超える
見積で「修正対応します」とだけ書いた場合。
実際に起きること:
- 1回目の修正:「ここを変えてください」
- 2回目の修正:「やっぱり元に戻してください」
- 3回目の修正:「別のパターンも見たい」
- 4回目の修正:「ちょっとここが気になる」
- 5回目の修正:「もう少し調整を」
- …
- 10回目の修正:「あと少しだけ」
こうして、延々と修正地獄が続く。
パターン2:修正の範囲が広がる
修正回数を決めていないと、修正の範囲も広がっていく。
最初: 「色を変えてください」
途中から: 「やっぱりレイアウトも変えたい」 「フォントも変えてください」 「この要素も追加してほしい」
気づけば、修正ではなく作り直しになっているのである。
パターン3:時給が下がり続ける
修正が増えるほど、時給は下がる。
例:
- 報酬:5万円
- 当初の想定作業時間:20時間
- 想定時給:2,500円
修正10回の結果:
- 実際の作業時間:40時間
- 実際の時給:1,250円
時給が半分になるわけだ。
パターン4:精神的に消耗する
修正が終わらないと、精神的にも消耗する。
- いつ終わるのかわからない
- どこまでやればいいのかわからない
- 断りづらい空気になる
この状態が続くと、
「もう無理かもしれない」
と思い始めるのである。
なぜ修正が終わらないのか
修正が終わらないのには、構造的な理由がある。
理由1:クライアントの「完璧」は存在しない
多くのクライアントは、「完璧なもの」を求める。
だが、その完璧は、存在しない
なぜなら、
- イメージが曖昧
- 見てから判断したい
- 完璧の基準がない
からだ。
だから、
- 「何か違う」と言われる
- 「もう少し」と言われる
- 「別のパターンも」と言われる
これが延々と続くのである。
理由2:修正のコストが見えていない
クライアントにとって、修正は「無料」に見える。
- 何回でも修正できる
- コストがかからない
- 気軽に依頼できる
だから、
「ちょっと変えてください」 「やっぱりこうしてください」
と、気軽に修正を依頼してくるのである。
理由3:決定を先送りにできる
修正回数が無制限だと、クライアントは決定を先送りにできる。
- 「とりあえず見てから決めよう」
- 「もう少し見てから判断しよう」
- 「他のパターンも見たい」
この先送りが、修正を増やすのである。
理由4:終わりの基準がない
修正回数を決めていないと、「終わり」の基準がない。
- いつ終わるのか
- どこまでやればいいのか
- 何をもって完成とするのか
これが不明確なまま進む。
だから、修正が延々と続くわけだ。
修正回数を決めないと、なぜ消耗するのか
修正が終わらないことで、何が起きるか。
消耗1:時間が奪われる
修正が増えるほど、時間が奪われる。
例:
- 1回の修正:30分
- 10回の修正:5時間
この5時間があれば、
- 新しい案件を1つこなせる
- スキルアップの時間に使える
- 休むことができる
だが、修正に消えていくのである。
消耗2:時給が下がる
修正が増えるほど、時給は下がる。
そして、時給が下がるほど、
- 生活が苦しくなる
- もっと仕事を増やさないといけない
- さらに時間がなくなる
この悪循環に入るわけだ。
消耗3:精神的に追い詰められる
修正が終わらないと、精神的に追い詰められる。
- 「いつ終わるんだろう」
- 「このまま永遠に続くのでは」
- 「断れない」
この状態が続くと、
- 仕事が楽しくなくなる
- クライアントを恨むようになる
- 「もうやめたい」と思う
こうして、消耗していくのである。
消耗4:他の仕事に影響が出る
修正対応に時間を取られると、他の仕事に影響が出る。
- 新規案件の対応が遅れる
- 納期に間に合わなくなる
- クオリティが下がる
結果として、
- 信用を失う
- 仕事が減る
- さらに消耗する
という流れになるのである。
修正回数を決めている人は、消耗しない
逆に、修正回数を決めている人は、消耗しない。
決めている人の見積
修正回数を決めている人の見積は、こうだ。
【ロゴ制作】
・初回ヒアリング
・コンセプト提案
・ロゴ案3案
・修正3回まで
・納品形式:AI、PNG、JPG
料金:5万円
納期:発注から2週間
※修正4回目以降:1回5,000円
ポイント:
- 修正3回まで、と明記
- 追加料金の条件も明記
これだけで、消耗しなくなるのである。
なぜ消耗しないのか
理由1:終わりが見える
修正3回までと決まっていれば、
- 終わりが見える
- 計画が立てられる
- 精神的に楽
という状態になる。
理由2:クライアントも決断する
修正回数が決まっていると、クライアントも真剣に考える。
- 「3回しかないから、慎重に見よう」
- 「本当に変えたい部分だけ言おう」
- 「決断しよう」
こうして、修正が減るのである。
理由3:時給が計算できる
修正回数が決まっていれば、時給が計算できる。
- 制作時間:15時間
- 修正対応:3回×30分=1.5時間
- 合計:16.5時間
- 時給:約3,000円
この計算ができるから、安心して受けられるわけだ。
理由4:追加料金で対応できる
修正4回目以降は、追加料金で対応できる。
だから、
- 無限に修正する必要がない
- 対価をもらえる
- 消耗しない
という状態になる。
修正回数の決め方
では、修正回数はどう決めればいいのか。
基本は「3回」
多くのクリエイターが、修正回数を3回に設定している。
理由:
- 1回目:全体的な調整
- 2回目:細部の調整
- 3回目:最終調整
この3回あれば、大抵のものは完成する。
案件によって変える
ただし、案件によって変えてもいい。
小規模案件:修正2回
- 名刺デザイン
- バナー制作
- 簡単なロゴ
中規模案件:修正3回
- ロゴ制作
- Webデザイン
- パンフレット
大規模案件:修正5回
- ブランディング全体
- サイト全体のデザイン
規模に応じて、調整するわけだ。
追加料金も決めておく
修正回数を超えた場合の追加料金も、決めておく。
例:
- 修正4回目以降:1回5,000円
- 大幅な変更:別途見積
この条件を最初に伝えておくと、
- クライアントも納得する
- 追加料金を請求しやすい
- トラブルにならない
というわけだ。
修正回数を決めることに抵抗がある人へ
「修正回数を決めたら、仕事が来なくなるのでは?」
こう思う人もいるだろう。
誤解1:柔軟性がないと思われる
「修正3回まで、と言ったら、柔軟性がないと思われるのでは」
そう心配する人がいる。
だが、実際は逆である。
修正回数を決める=プロ
クライアントは、こう思う。
- 「この人は、ちゃんと設計している」
- 「プロとして、基準を持っている」
- 「信頼できる」
むしろ、好印象なのである。
誤解2:仕事が減る
「修正回数を決めたら、仕事が減るのでは」
これも誤解だ。
実際に起きること:
- 条件の悪いクライアントが減る
- 条件の良いクライアントが増える
- 仕事の質が上がる
結果として、
- 消耗が減る
- 時給が上がる
- 長く続けられる
というわけだ。
誤解3:クレームになる
「修正回数を超えたら、クレームになるのでは」
これも心配しすぎである。
実際は:
- 最初に伝えておけば、納得する
- 追加料金を請求しても、払ってくれる
- トラブルにならない
大事なのは、最初に明確にすることである。
修正回数を決めた後に起きること
実際に修正回数を決めると、こんな変化が起きる。
変化1:修正が減る
不思議なことに、修正回数を決めると、修正が減る。
理由:
- クライアントが真剣に考える
- 本当に必要な修正だけ依頼する
- 決断が早くなる
結果として、
- 修正1〜2回で終わることが多い
- 3回使い切ることは少ない
というわけだ。
変化2:クライアントの質が上がる
修正回数を決めると、クライアントの質が上がる。
理由:
- 条件を理解してくれる人が来る
- プロとして扱ってくれる
- 信頼関係が築ける
結果として、
- 仕事がやりやすい
- 長期的な関係になる
- リピートが増える
という状態になる。
変化3:時給が上がる
修正が減ると、時給が上がる。
例:
- 報酬:5万円
- 作業時間:20時間(修正込み)
- 時給:2,500円
無限修正の時と比べて、時給が2倍になることもあるのである。
変化4:精神的に楽になる
修正回数が決まっていると、精神的に楽になる。
- 「3回で終わる」とわかっている
- 計画が立てられる
- 安心して仕事ができる
この安心感が、長く続けるための基盤になるわけだ。
修正が増えそうな時の対処法
それでも、修正が増えそうな時はある。
対処法1:事前ヒアリングを充実させる
修正を減らす一番の方法は、事前ヒアリングを充実させることだ。
聞くべきこと:
- どういうイメージか
- どういう目的か
- どういう雰囲気が好きか
- 嫌いなものは何か
これを最初に聞いておくと、修正が減る。
対処法2:途中確認を入れる
大きな案件の場合、途中確認を入れる。
例:
- ラフ案の段階で確認
- 方向性を確認してから進める
- 大幅な修正を防ぐ
この途中確認が、修正を減らすのである。
対処法3:修正の理由を聞く
修正依頼が来たら、理由を聞く。
「どういう理由で変更したいですか?」
この質問をすることで、
- クライアントが考え直す
- 本当に必要な修正かわかる
- 無駄な修正が減る
という効果がある。
対処法4:修正回数を超えたら、丁寧に伝える
修正3回を超えたら、丁寧に伝える。
ご連絡ありがとうございます。
修正は3回までとさせていただいておりますが、
今回で4回目となります。
追加修正は、1回5,000円で対応可能です。
ご検討いただけますと幸いです。
この伝え方なら、
- クライアントも納得する
- トラブルにならない
- 追加料金をもらえる
というわけだ。
おわりに
修正回数を決めないと、クリエイターは消耗する。
理由は単純だ。
修正が終わらない無限ループに入るから
- 時間が奪われる
- 時給が下がる
- 精神的に追い詰められる
この消耗を防ぐには、
修正回数を決めること
これだけである。
- 修正3回まで
- 追加修正は1回◯円
この条件を最初に伝えておくだけで、
- 修正が減る
- 時給が上がる
- 精神的に楽になる
という状態になる。
「修正、何回でも対応します」
この言葉は、一見親切に見える。
だが実際は、自分を消耗させる罠である。
修正回数を決めることは、クライアントのためでもあり、自分のためでもある。
境界線を引くことが、長く続けるための前提なのである。
ブログでは構造を、
noteでは判断基準をまとめています。
実務でそのまま使うための整理なので、必要な人だけ、参考にしてください。
▶︎ noteはこちら
—— 銭ナッツ


